社風や人間関係の相性がビジネスに与える影響とは?実証研究から探る

目次

社風や人間関係がビジネスシーンにどのような影響をもたらすのか?

人にはそれぞれ、異なる行動や考え方、感情の感じ方に違いがあります。「組織文化・社風とは?学術研究と最新の理論で文化の本質に迫る」では、どのようにして異なる価値観をもつ個人をまとめる事ができるのかを、理論的に説明しました。

異なる価値観を持つ個人がそれぞれ好き勝手に行動しては困るので、集団としてのまとまりをある程度確保するための工夫が必要です。それを達成するために、我々ヒトは文化を形成する能力があります。全体としてある程度共通のルールや考え方を持つ事で、集団として達成したい事をより達成しやすくする事ができます。

文化を測る方法の一つとして、個人の性格や価値観を測る方法があります。元来、性格研究や価値観の研究は、心理学でいち早く測定方法が確立された分野です。のちに、性格や価値観の研究は関連する他分野でも応用され、経営学などにも応用されました。

測定方法の発展と広まりを通して次第に「集団としての価値観」を文化として測定する事ができるようになりました。国においては「文化」、会社などの組織においては「社風・カルチャー」、地域においては「コミュニティ文化」などと呼ばれ、文化の意義は様々なグループの単位について応用できます。一連の文化研究の発展を通して分かってきた事は、文化や社風は、それぞれのグループによって形が違うと言う事です。

社会や組織によってカルチャーが異なる事が分かってきましたが、どのようにして「良い」文化を創る事ができるのでしょうか?どのような文化や社風が、どのように生産性などの結果に効果があるのでしょうか?実際に、カルチャーのマッチが個人に対してどのような効果があるのかを知る事ができれば、採用や人材配置などの人間関係の向上に応用できるようになります。

今回の記事では「カルチャーマッチ」と言う概念の定量化にいち早く貢献した、パイオニア的なデータ分析の結果を紹介します。この分析を通して、大まかに以下の事がわかりました。

  • 高いカルチャーフィットは個人に良い効果をもたらす
  • カルチャーフィットには種類があり、種類によって微妙み効果が違う

それでは、研究内容を詳しくみていきましょう。

カルチャーフィットのメタ分析を通して分かったこと

現在アイオワ大学のビジネススクールの産業組織心理学者である、クリストフ・ブラウンが率いる研究グループは、2005年にメタ分析と言う手法を通して、カルチャーフィットの効用についての結果を発表しました。

メタ分析とは、共通の研究テーマをもつ、現時点までで報告された論文やデータを集め、全てを一まとめにしてデータ分析をする手法の事を言います。それぞれの研究ではデータが偏ったり、データ解析者のバイアスやミスなどによって結果に隔たりが生じる可能性があるので、メタ分析をすればそのような隔たりをなるべく減らし、公平な判断ができます。一つの問いに対してより包括的かつ公平に検証ができるので、メタ分析は非常に強力な検証方法です。

クリストフ・ブラウンらは、カルチャーフィットの効果を調べるために、会社を対象に調べた調査研究を集めました。社員の性格や価値観と、それを取り巻く環境との相性がわかれば、よりカルチャーフィットの高い社員に対してどのように効果があるのかを調べる事ができます。

クリストフ・ブラウンらはまず始めに、データの特性上から「カルチャーフィット」と言う概念が当てはまるフィットの種類を細かく定義しました。フィットが高いと言うことは、相性が高い(回答が似通っている)事を意味します。まず「誰と」のフィットなのかを、大まかに以下の種類に分けました。(実際にはより細かく分類されています)

  1. 職種や業務とのフィット
  2. 組織全体の価値観(社風)とのフィット
  3. 部署とのフィット

そして次に

  • 客観的なフィット
  • 主観的なフィット

といった分類をしました。

客観的なフィットとは「あなたは自身はどういう人ですか?」といった設問に対する回答を、同じ設問に答えた他の社員との回答を客観的に照らし合わせるフィットです。主観的なフィットとは「あなたは、あなたの置かれた環境(業務、部署、組織、上司など)について、どれだけフィットしていると思いますか」と言う設問に基づいています。主観的なフィットとは、客観的なフィットに関係なく、自分自身の主観的な認識を問う方法です。

それぞれのフィットの種類の効果の違いについて、関係性の目安となる相関係数を添えて見ていきましょう。(相関係数の ”r” は、絶対値の1に近ければ近いほど、強い関係性を意味します。正負の符号は、その関係性の方向性を示します。目安としては、0.0~0.2 = (弱), 0.3~0.5 = (中) としてあります)

1.職種や業務とのフィット

職種や業務とのフィットは、自分の性格や価値観と、自分の関わる業務内容が要求するスキルや特性にどれだけマッチしているかの指標です。分析を表にまとめると以下のようになります。

客観的なフィット 主観的なフィット
業務満足度  r = .22(弱) r = .46 (中)
組織への忠誠度 r = .43 (中) r = .17 (弱)
離職の意図 r = -.36 (中) r = -.15 (弱)
実際のパフォーマンス r = .17 (弱) r = .13 (弱)

全体の傾向としては、業務とのフィットが高い人ほど、パフォーマンス面や満足度において良い効果が現れています。

特筆すべきは、客観的なフィットよりも、主観的なフィットの方が業務満足度への効果が高い事です。つまり「自分が自分の業務に向いていると思っているかどうか」と言う主観的な評価が大事だと言うことを示唆しています。

なお実際のパフォーマンスはあまり高く予測していないのは、研究や職種によって「パフォーマンス」の定義が異なることと、実際にパフォーマンスの指標を測るのが難しい事に由来している可能性があります。

2.組織全体の価値観(社風)とのフィット

組織全体の価値観(社風)とのフィットは、自分の性格や価値観と、自分が属する組織全体との価値観(他の社員との合計)がどれだけマッチしているかの指標です。  

客観的なフィット 主観的なフィット
業務満足度  r = .23 (弱) r = .37 (中)
組織への忠誠度 r = .15 (弱) r = .12 (弱)
離職の意図 r = -.15 (弱) r = -.26 (弱)

全体の傾向として、組織全体とのフィットは、前回の「業務のフィット」ほど、それほど満足度や忠誠度おいて強い効果は示していませんでした。

組織全体の価値観(社風)とのフィットにおいて観察された興味深い傾向としては、主観的なフィットの方が客観的なフィットよりも高い満足度を予測している事です。つまり「自分は自分の組織とのカルチャーフィットが高い」と主観的に思っている人ほど、各面において良好な効果が現れています。

3.部署とのフィット

部署とのフィットは、自分の性格や価値観と、自分が属する部署の価値観がどれだけマッチしているかの指標です。なお、このフィットにおいては主観的な指標のデータは含まれていません。

客観的なフィット
業務満足度  r = .24 (弱)
組織への忠誠度 r = .15 (弱)
離職の意図 r = -.17 (弱)
実際のパフォーマンス r = .15 (弱)

全体の傾向として、部署毎のフィットも、他のフィットと比べて同じような傾向が現れています。しかし、全体の傾向としては、やや弱い効果であるようです。

メタ分析のまとめ

この分析では、3つの異なる種類のカルチャーフィットを調べました。

  1. 職種や業務とのフィット
  2. 組織全体の価値観(社風)とのフィット
  3. 部署とのフィット

これら三つのフィットを比べると、カルチャーフィットは、どの種類をとっても概ね良い効果がありそうです。しかし、フィットの種類毎に効果の強さに微妙な違いがあることから、フィットの種類を「誰とのフィットなのか」を念頭に置いて考えることが有用であることがわかります。

  • 業務満足度を高く予測するのは「主観的な職種や業務とのフィット」
  • 組織への忠誠度に一番効果的なのは「客観的な職種や業務とのフィット」
  • 離職への意図を一番抑えるのは「主観的な組織全体の価値観(社風)」

だと言うことがわかりました。

全体として見られる興味深い傾向は、主観的なフィットも客観的なフィットと同じくらい大切だと言うことがわかりました。この結果は、組織のカルチャーフィットを可視化する事の大切さを示唆しています。

なぜなら、性格や価値観といった概念は目に見えない抽象的な概念であるだけでなく、複数人の集まる組織においては、カルチャーフィットを意識することはかなり難しいからです。

しかしカルチャーフィットが高いと「感じている」社員ほど、良い効果が現れていると言うことは、主観的認識はテクノロジーによって促すことができるかもしれません。主観的なカルチャーフィットは、可視化する事によって全体と共有できます。可視化すれば、主観的に認識しているカルチャーフィットを、さらに肯定してあげる事ができます。

カルチャーフィットによって業務満足度や定着意欲が向上する

性格や価値観は、各個人の中にある特性で、検査などを用いて個人から測ることができます。しかし、それぞれの組織において違うカルチャーが生まれることから、カルチャーフィットと言う視点で性格や価値観の相性を考える手法が発展してきました。

先駆者的であるメタ分析を見てみると、フィットの種類によって微妙な効果があるだけでなく、主観的なフィットも大事だと言うことがわかりました。

このように、カルチャーフィットに対して様々なアプローチをしてみることで、より正確に組織のカルチャーを強化することができるでしょう。

Kristof‐Brown, A. L., Zimmerman, R. D., & Johnson, E. C. (2005). Consequences of individual’s fit at work: A meta‐analysis of person–job, person–organization, person–group, and person–supervisor fit. Personnel Psychology, 58(2), 281-342.

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